ルネサンス期の絵画や彫刻は、かなり写実的ですが、いわゆるデフォルメぽくしてあるものも結構あるようです。
描き手の解釈とも言えるのでしょうが、見る人に分かりやすくといった意図もあるかもしれません。
デザインにおける、強調、アイコンといったものの先駆けじゃないでしょうか。
最近めっきり暑くなって食欲が落ちます。
健康診断の後に痩せるというなんだかよく分からないことになっています。
さて、宗教画や彫刻のデフォルメについてご紹介です。
ピエタの像
言わずと知れたミケランジェロさんの彫刻作品です。
いくつか作成したそうですが、完成したのはサン・ピエトロ大聖堂のピエタ像のみとのことです。
当時も言われたことらしいですが、イエスの亡骸を抱えている聖母マリアが若すぎる。
これもデザインがデフォルメされたと言えるでしょう。
ちなみに、別の人が作ったなど色々と批判を受けて、腹が立ってミケランジェロは自分の名前を掘り、今でも残っています。パンクロックです。
聖母マリアは美しいままである。という今で言うアイコンに相当するのかもしれません。
ダビデ像
これもミケランジェロ作の超有名な彫刻です。
巨人ゴリアテを倒すために、投石機をもってやや斜め上を向いています。ちなみに目玉はハートになっています。
ものすごく忠実に美しく人体を表していると言われますが、これもデフォルメがなされているそうです。
5メートル超えの大きな像で、少し上半身が大きめに作られています。
宮殿の入り口に置かれるために制作されたため、台座を入れるとかなり見上げる必要がありますね。
そのため、下から見たらバランスがよく見えるように上半身が大きめに作られたのだろうというのが通説です。
よく考えるとこれはUXを考えて作られたとも言えますね。
光背・後光
大抵どの宗教でも神聖な人物の後ろには光が差す描写があります。
例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチの初期の作品「キリストの洗礼」です。
師匠のヴェロッキオとの共作ですが、レオナルドが担当したといわれる左側の天使も含め、イエスと、洗礼者ヨハネも後光が差しています。
どちらかというと光輪でしょうか。
こちらも有名な「岩窟の聖母」ですが、レオナルドさんはいくつか描いていて、ロンドンにあるバージョンはうっすら円光が描かれています。
不思議なことに一番右側の天使の上には円光がありませんね。
ここまで来るとなんとなく分かりますが、よくある天使の上にある輪っかはこれが原型ですね。
神々しい存在であるという強調の表現だと思います。
天使の姿
天使を絵で描く場合、当時の方々はかなり考えたのかもしれません。
「男性にも女性にも見えて、誰しもが魅了される姿」という天使の特徴を絵画に落とし込むということになります。
受胎告知に登場する天使はガブリエルという名前で、この名前は現代では女性の名前で存在しています。
方や、ミカエルなどは英語ではマイケルのため、男性的な見た目で描かれることが多いようです。
天使の名前で女性的な見た目だったり、美しい青年だったりと描き分けていたりします。
この一番下に描かれている2人の天使は有名で、あらゆるところで見かけることが出来ます。
ここから派生したのかどうかは分かりませんが、このように子供の見た目で天使が描かれることが段々と多くなってきます。
よくある天井をぐるぐる回ってる大勢の天使などは、子供の見た目だったりするのが多いですね。
「誰もが魅了される両性に見える人間の姿」をデフォルメすると幼子ということになるのでしょう。
人は本能的に幼子は可愛いと思うように出来ているはずなので、上手いこと考えたと思います。
ちなみに、羽の生えた子供が矢を持ってる姿のあれは、天使ではないです。ローマ神話の愛の神であるキューピッドです。
まとめ
他の宗教芸術でもそうですが、古今東西見渡すとデフォルメがそこそこ見受けられます。
仏教でも仏様の後光は、天使の輪っかと同じことだと思います。
我々も何かをデフォルメしてアイコンにしたりしますが、さすが天才達の発想はすごいです。
デザインについては古典も勉強してみると面白いと思います。温故知新ってことで。